植物とモリブデン及び欠乏症について(1)
植物とモリブデンについて、まとめてみました。
Ⅰ.植物体にかかわる元素について
1.植物体の構成元素
酸素(O)、水素(H)、炭素(C)
2.多量元素
窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、
カルシウム(Ca)、イオウ(S)
3.微量元素
塩素(Cl)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、
マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブテン(Mo)
Ⅱ. 微量元素の役割と欠乏症について
元素吸収形態 | 主な生理作用 |
塩素(Cl)Cl- | 1.光合成の明反応と密接な関連。 2.デンプン、セルローズ、リグニンなどの植物体内構成成分合成に関与。 |
ホウ素(B)BO33- | 1.水分、炭水化物、窒素代謝に関与。 2.カルシウムの吸収、転流に関与し、細胞膜ペクチンの形成と通導組織の維持を図る。 3.酵素作用の活性化。 4.若芽の分化、花粉の生成、受粉作用が障害を受け、稔実が不良となる。 |
ケイ素(Si)H3SiO4-低分子のコロイド状ケイ酸 | 1.イネ科植物、特にイネの珪化細胞が増加し、耐病、耐虫性が増大する。 2.茎葉が丈夫になり、耐倒伏性が増大する。 |
鉄(Fe)Fe2+ Fe3+ | 1.葉緑素の生成に関与。 2.植物体内で銅、マンガンなどと拮抗作用。 3.鉄酵素として生体内の酸化、還元反応に関与。 |
マンガン(Mn)Mn2+ | 1.葉緑素の生成、光合成、ビタミンCの合成に関与。 2.酸化還元酵素の活性化。 |
亜鉛(Zn)Zn2+ | 1.酵素の構成元素として、またその働きを活性化し生体内の酸化還元を触媒する。 2.オーキシン先駆物質トリプトファン生成に関与。 3.鉄、マンガンと拮抗作用。 |
銅(Cu)Cu+ Cu2+ | 1.植物体内の酸化還元に関与する銅酵素の組成成分。 2.葉緑素の形成に間接的に関与。 3.鉄、亜鉛、マンガン、モリブデンと相互作用がある。 |
モリブデン(Mo)oO42- | 1.植物体内の酸化還元酵素の構成元素であり、根粒菌の窒素固定、硝酸還元に関与。 2.ビタミンCの生成に関与する。 |
Ⅲ. 微量元素の作用
:次の元素が欠乏した場合
鉄(Fe):光合成に必要な葉緑素の生成に関与・・・・・ 新葉の黄化
マンガン(Mn):葉緑素の生成やビタミンCの合成に関与・・・・・異常落葉や黄化
ホウ素(B):水分や炭水化物の代謝に関与・・・・・ 根や新芽の生育が阻害される
亜鉛(Zn):葉緑素や植物ホルモンの生成に関与・・・・・不足すると葉の成長が阻害される
モリブデン(Mo):窒素の消化吸収に関与し、最も少量で必要な元素
銅(Cu):酸化還元反応や葉緑素の形成に関与・・・・葉の黄白化や褐変が起こる
塩素(Cl):光合成の明反応に関与・・・・・葉の先端が枯れる
ニッケル(Ni):尿素を分解する酵素の構成元素・・・・・葉の黄化
Ⅳ. モリブデン役割について
1.必須元素中でも必要量の最も少ない元素である。
硝酸還元酵素の成分元素および窒素固定酵素の成分元素となり、
アンモニア態以外の窒素の同化に重要な役割を果たしている。
2.ビタミンCの生成に関与する。
Ⅴ. モリブテン酵素について
①キサンチンオキシダーゼ:分子量27,000、2Mo/8Fe
ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸の転換触媒。
②アルデヒドオキシダーゼ:分子量300,000、2Mo/8Fe
ピリミジン、プリン、ブテリジンと関連化合物の酸化
③亜硫酸オキシダーゼ:分子量110,000
亜硫酸塩の硫酸転換酵素触媒。
④キサンチンデヒドロゲナーゼ:分子量300,000、Mo/8Fe
ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸の転換の触媒
⑤ニトロゲナーゼ:三種類
ⅰ)分子量226,000、2Mo/8Fe、
ⅱ)分子量160,000-2,000,000、1-2Mo/12-15Fe、
ⅲ)3分子量216,000、1Mo/10Fe
窒素固定
⑥ニトロリダクターゼ:分子量228,000、1-2Mo/20Fe
硝酸還元酵素
⑦NADPHデヒドロゲナーゼ:分子量500,000、Mo5+
鉄FMNを共存因子。ミトコンドリアに存在。
Ⅵ. モリブテン酵素の推定構造
↑バクテリア中で窒素固定酵素
Ⅶ. 植物をとりまく窒素の流れのまとめ
Ⅷ. モリブデン欠乏症について
1.モリブデンは、硝酸還元酵素の主要な成分。
これが不足すると作物体内に硝酸が蓄積し害を起こす。
2.モリブデンは根粒菌が遊離窒素を固定するのに関与する。不足すると根粒の着生が劣り、窒素固定能が著しく低下し、窒素欠乏と同じ症状を呈する。
3.植物体内に硝酸体窒素が還元されずに残ると、これを好む吸汁性害虫(アブラムシ類、カイガラムシ類)が増加しやすいと言われている。
4.モリブデンが適当に吸収されていると亜鉛・銅・ニッケルなどの重金属などの過剰害を軽減することができ、作物体内での燐酸の有機化に役立つ。
Ⅸ. 土壌中のモリブテンについて
土壌中のモリブテン濃度は0.5~3ppm。植物に利用される置換性のモリブテンは、0.05~0.4ppm、水溶性のものは0.01~0.02ppmであり、モリブテン不足は起こしにくい。土壌が酸性化するとモリブテン不足となる。
溶存状態:MoO42-
Ⅹ.土壌の酸性化とモリブテン不足
1.pHの低い土壌では、モリブテンが土壌中のアルミニウムや鉄と結合し、溶解度が低下する。
2.モリブテンは水溶液中ではモリブテン酸イオン(MoO42-)として存在し、植物に取り込まれるのもこの形態である。モリブテン酸アニオンはpHが下がると溶解度が低下し、水に溶けにくくなる。
3.酸性土壌障害は、モリブテン欠乏症の可能性があると言われている。
Ⅺ.欠乏症の症状
1. 欠乏症状は作物により多少違うが、古い下葉か中葉に黄緑色ないし淡橙色の斑点ができ、葉が内側にむかった湾曲しコップ状になる。葉縁部には褐色の壊死症状が見られる。果実は、その程度は軽いがヤニを生じる。
2. ダイコンなどでは鞭状葉になる。
3. 豆類では根粒菌の着生が悪くなり、窒素欠乏と同様の症状が出る。
(続く)
弊社は、このテーマをもとに、研究、実験をかさね、樹木本来の力をつけるために、また樹木の異常・枯れ、害虫被害の対策を目指して、製品をつくっております。
関連ブログ
・K568開発経緯と特徴 樹幹埋設による安全な樹勢回復(1)
・K568開発経緯と特徴 樹幹埋設による安全な樹勢回復(2)